タックスヘイブンのオフショア法人とは、事業を運営している国とは別の国、地域で登記した法人です。登記した国や地域以外で事業を行うことができる国際的な法人で、IBC(インターナショナルビジネスカンパニー)と呼ばれることもあります。オンショア(国内法人)とは異なり、国内の人々と事業を行うことはできません。
タックスヘイブン(Tax Haven)とは、所得税・住民税などの源泉課税や法人税・相続税・贈与税などについて完全に非課税、もしくは著しく税率が低く、主に税制上の優遇措置を地域外の企業に対して戦略的に設けている国や地域のことで、租税回避地とも呼ばれます。他にも大きな特徴があり、プライバシーや金融情報の保護などセキュリティが制度的に強化されています。法人設立に際しても、その株主や役員の情報は公開する必要がありません。また、一般的に規制が緩やかで、会社の構造や資本金、取締役と株主の数などについて柔軟性が高く、法人の継続も他と比べて少ない要件で可能になっています。
また、タックスヘイブンでは、プライバシー保護を目的に、多くの場合、ノミニー制度が利用されます。しかし、そのノミニー制度が脱税などの行為に悪用される例が見られ、先進国では、そのような過度な租税回避に対して、多くの国が租税条約を結ぶようになりました。これにより、情報交換が可能になり、名義ではなく実態で課税できるようになっています。また、OECD(経済協力開発機構)やG20は、オフショア法人の透明性を高めるため、課税ルールを見直しています。これは、一部のオフショア法人が行っていた過度な租税回避行為に対処するべく、各国の税務当局が協調して、実態に即したものに国際課税ルールを見直したものです。
例えば、日本ではタックスヘイブン対策税制という制度を既に設けていましたが、2017年に税制改正を行い、その定義を拡大しています。このタックスヘイブン対策税制とは、正式名称を外国子会社合算税制といい、タックスヘイブンにある子会社の利益を日本の親会社に配当されたものとみなして、日本で課税するという制度です。タックスヘイブン対策税制の対象となるのは、ペーパーカンパニーなどの特定外国関係会社等や、対象外国関係会社などに該当する場合です。このタックスヘイブン対策税制により、日本の居住者はオフショア法人を利用したとしても、節税できるとは限らなくなっています。
タックスヘイブン対策税制により、過度な租税回避が減少し、課税が強化されています。また、タックスヘイブン対策税制は、国境を越えた税務逃れを防止し、国際的な租税透明性を高めています。これにより、国際社会全体で租税回避問題に取り組むことが可能になりました。さらに、企業や個人間の税負担の公平性を高まり、過度な租税回避によって一部の富裕層や企業が負担を免れることがなくなり、全体的な税負担がより均等になることが期待されています。
しかし、オフショア法人や個人にとっては、税務上の義務の増加や、事業環境が複雑化し、事業活動や資金の移動に関する手続きやコストが増加する事が懸念されます。また、国際協力に基づく情報交換や、タックスヘイブン対策税制など課税ルールの変更により、国際的な課税は複雑化しています。実際、タックスヘイブン対策税制の対象になるかどうかといった判定は非常に複雑であり、大手企業や銀行などでも裁判に発展しています。このことからわかるように、リスクや負担を正確に把握することが難しくなり、タックスヘイブン対策税制などの税務リスクや法的責任を正確に評価することが難しくなっています。このため、専門家の存在が以前にも増してクローズアップされるようになっています。オフショア法人の設立や運営に関する専門家は、タックスヘイブン対策税制など国際的な課税ルールの変化など、情報に敏感なだけでなく、知識も豊富に持ち合わせています。また、国内だけでなく、現地の法務をサポートする弁護士や、税務一般を取り扱う税理士の存在も欠かせません。これら専門家のアドバイスにより、オフショア法人の設立から運営、そして廃止に至るまでを、たくさんの企業が決断しています。